自動車事故が起こったとき、事故現場でやっておかなければならないことは、どんなことがありますか?
事故の状況をできるだけ詳しく把握しておきましょう。事故後の示談交渉で必要になるかもしれません。
互いの損害賠償のために、事故の相手と示談交渉をおこなわなければなりません。といっても、事故現場でいきなり示談交渉するのは、おすすめできません。
理由の一つは、お互いの損害がハッキリしていないからです。後日、病院や修理工場で確認しないと、正確な損害額はわかりません。もうひとつは、示談交渉には専門知識が必要なので、自分でやるより、損保会社の社員や弁護士などに任せた方が、うまくいくからです。
というわけで、事故の現場では、その後の示談交渉に備えて事故の状況をできるだけ詳しく把握しておきたいです。
事故の状況とは、以下のような項目です。
- 事故の日時・場所
- 事故の相手の確認(住所、氏名、連絡先、ナンバープレートの番号、勤務先、自賠責保険と任意保険の保険会社名・契約者名・証券番号)
- 目撃者の確認(名前、連絡先)
- 必要なら事故現場を撮影
事故の直後は、気持ちが動転して冷静に判断できなくなっているかもしれません。後ほど、落ち着いて事故の様子を振り返ることができるように、できるだけ詳しく状況を把握しておきたいです。
事故発生時に警察に連絡して、事故を届け出ましょう。それをおこたると、自動車保険の保険金を請求できなくなってしまいます。
損害保険会社に保険金を請求するとき、原則として交通事故証明書が必要になります。
交通事故証明書は、全国の自動車安全運転センターで発行してもらえますが、事故発生時に警察に届け出ていないと、発行してもらえません。
小さな事故のように思えても、事故後しばらくして、体の不調が出ることがあります。そんなとき、警察に届け出ていないと、損保会社に保険金を請求できなくなってしまいます。
できるだけ警察に届け出ておくことをおすすめします。
また、警察に届け出て、事故現場を検証してもらうと、上でご案内した事故状況の大部分を、警官が記録してくれます。そういう意味でも助かります。
示談交渉は、経験と知識のある損保会社の担当者が代行します。事故の現場で、事故の相手と直接に示談をしないでください。
事故で損害が発生したら、当事者それぞれの責任割合に応じて、損害賠償します。その責任割合を決めるための話し合いが示談交渉です。
こちらに運転ミスや判断ミスがあったとしても、100%こちらが悪いとは限りません。動いている車同士の事故では、それぞれに責任があるというのが、判例(裁判官)の考え方です。
そうした知識の乏しいわたしたちが、気持ちが動転している事故現場で、事故の相手と直接に示談すると、不利な約束をしてしまうかもしれません。
口約束であっても、法的な効力を持ちます。事故の相手にわびたり、気づかうのは問題ありませんが、損害賠償についての具体的な交渉は避けてください。
その他に、ドライバーの常識として、事故現場でやっておきたいことは、被害の拡大を防ぐことです。
運転免許取得や更新のときに教わることなので、聞き覚えのあることばかりでしょう。
- ケガ人の救護(救急車を呼び、救急車が到着するまで可能な限り応急手当)
- 二次災害の防止(車両の移動、破損物の撤去、ハザード点滅、停止表示器材設置など)
交通事故のときに、こちらに過失がないと、損保会社は示談交渉してくれないそうですね。自分で示談交渉できるか不安です。
損保会社が示談を代行してくれないときは、弁護士など法律の専門家を活用しましょう。
自動車事故で損害が発生したときに、こちらに全く過失がなければ、こちらが加入している損保会社は示談交渉してくれません。
これは、損保会社が決めたルールではなく、法律に定められているルールです。こちらに過失がないということは、損害賠償において損保会社の出番はなくなります。それなのに示談交渉を引き受けたら、弁護士とか司法書士の分野に割り込むことになってしまいます。
さて、こちらの損保会社が示談交渉をやってくれなくても、事故の相手の損保会社は示談交渉に乗り出してきます。
つまり、こちらが自分で示談に臨むとしたら、損保会社の示談のプロと対決することになります。
損保会社の示談担当者は、少しでもこちらに払う賠償金を安くするために、駆け引きをしてきます。こちらの立場を思いやってくれることはありません。
そんな相手と、損をしないように示談交渉を進めるのは、簡単なことではありません。費用は発生しますが、弁護士などの専門家の活用をおすすめします。
弁護士等の費用も、損害の一部として相手に賠償請求できます。また、自動車保険の特約で、これらの費用を準備出来ます。
弁護士等に依頼するにあたって、費用が気になってしまいます。
弁護士等の費用も、事故の相手に請求できる
弁護士等に依頼する費用は、事故による損害の一つとして、相手方に賠償請求できます。弁護士等に依頼するということは、相手の責任割合が100%ですから、全額相手に請求できます。
ただし、弁護士等への依頼料金が常識の範囲を超えるときは、超える金額は自腹になります。
また、弁護士によっては、弁護士が示談交渉したことで損害賠償を増額できたときに、増額分の一部を報酬として受け取る、というやり方を採用しています。
交通事故を専門にする弁護士だと、この方式をとっている可能性が高いです。
そういう弁護士に依頼したら、示談交渉が終わるまでにかかる費用は、意外と少額に収まります。
弁護士費用特約
ほとんどの自動車保険には、弁護士費用特約が用意されています。よく見かけるのが、300万円を上限に、実費を補償してくれるタイプです。
弁護等の費用は、事故の相手に請求できるので、必須の特約とは思いませんが、この特約を基本補償に組み込んでいる自動車保険もあります。
事故が起こったらパニックになってしまうかも。事故の直後から頼れる自動車保険はありますか?
事故のときに、事故現場に急行してくれるサービスがあります。事故現場でやるべきことを助言・代行してくれます。
損保会社に事故の連絡をすると、現場に急行して、事故現場でやるべきことを助言・代行してくれる自動車保険があります。
次の5つの自動車保険です。
- イーデザイン損保(セコム)
- セコム損保(セコム)
- SOMPOダイレクト(ALSOK)
- ソニー損保(セコム)
- 損保ジャパン(ALSOK)
- セゾン自動車火災は、SOMPOダイレクトに商号変更しました。
いずれも、現場に駆けつけるのは、損保会社の社員ではなく、上の( )内の警備保障会社の警備員です。
警備員なので、自動車保険の専門家ではありません。
残念に思われるかもしれませんが、示談交渉は相手のあることなので、事故現場で始められるわけではありません。警備員でも、十分に助けになります。
以下のようなことをやってくれます。
- 救急車の手配*
- 警察への連絡*
- レッカーやタクシーの手配
- こちらと事故の相手から、事故状況等の情報収集
- 事故現場や車両の写真撮影
- 収集した情報や画像を、損保会社に報告
というように、事故現場でやるべきことのほとんどを代行してくれます。ありがたいです。
ただし、*印の項目と、二次被害の防止は、警備員の到着を待たず、こちらで手早く済ませたいです。
ちなみに、上の5社のうち、損保ジャパン以外の4社は、すべての加入者が無料(追加料金無し)で、このサービスを受けられます。
損保ジャパンは、「DRIVING!」(ドライブレコーダーによる事故発生時の通知等に関する特約)を付加すると、このサービスを受けることができます(月々850円)。
事故の現場から、損保会社の事故受付に電話すれば、事故対応についてアドバイスしてくれます。
自動車保険を使う使わないにかかわらず、事故にあって不安になったときは、損保会社の事故受付に電話しましょう。
電話番号(フリーダイヤル)は、保険証券などに記載されています。
電話すれば、どの自動車保険でも、やるべきこと、確認すべきことをアドバイスしてくれます。それを聞くだけでも落ち着きます。
結論としては、事故で頭が真っ白になっても、損保会社と警察に連絡することさえ覚えていれば、大きな対応漏れは起こりにくいはずです。