運転に自信がありません。運転ミスで、車を建物や電柱などにぶつけないか心配です。自動車保険で対策できますか?

運転者に100%責任がある物損事故を、自損事故(単独事故)と呼びます。自動車保険で、対策できます。

運転ミスで建物、電柱、ガードレールなどにぶつかるような事故を、自損事故(単独事故)と呼びます。

この場合、事故の責任は100%運転者にあります。そして、他人の所有物に損害を与えるので、物損事故になります。

具体的には次のような事例が自損事故に当てはまります。

  • 自分の運転ミスで電柱やガードレールなどに衝突した。
  • 車庫入れをしているときに、車庫の壁や家屋へ突っ込んだ。
  • 走行中に運転を誤り、道路から飛び出した。
自損事故(単独事故)のイメージ

自損事故でも、警察に届け出ないと、保険を使えません。

自損事故も交通事故なので、警察への報告義務があります。

通常、自損事故では、違反点数や罰金は発生しません。

ただし、当て逃げ(事故を起こして、そのまま逃走すること)は例外で、警察に捕まったら違反点数が発生し、罰金・懲役を科されます。

ぶつけたことより、逃げたことによる罰を受けます。

もっとも、違反点数や罰金が発生しなくても、他人の所有物を壊したら、損害賠償する責任はあります。

たとえば、電柱は電力会社または電話会社の所有物です。ガードレールは、国・都道府県・市町村等の所有物です。所有者に対して、損害賠償しなければなりません。

警察に事故の届け出をすると、交通事故証明書を発行してもらえます。

事故の後、自動車保険の保険金を請求するときには、交通事故証明書を提出しなければなりません。

残念ながら、自損事故では、自賠責保険(強制保険)は、あまり役に立ちません。

自動車保険は、強制加入の自賠責保険と、それぞれの人が自主的に加入する任意保険(一般の自動車保険)に分かれます。

自賠責保険は、事故の相手の身体の損害を補償する保険です。所有物の損害は対象外です。

自損事故は物損事故なので、損害は人の身体ではなく、所有物です。事故の相手への損害賠償のために、自賠責保険の出番はありません。

例外は、家族以外の同乗者がいて、その人が亡くなったりケガをしたら、そのときは自賠責保険から保険金が出ます。

それ以外のすべての損害賠償は、任意保険を使うことになります。

つまり、自損事故のときに、中心的に活躍する保険は、任意の自動車保険です。

自損事故(単独事故)に自動車保険で備えるには、どんな補償内容にする必要がありますか?

自損事故のパターンによって、役に立つ補償は異なります。

自動車保険は、以下のような複数の保険が集まってできています。

  • 対人賠償保険(事故の相手の身体の損害を補償する)
  • 対物賠償保険(事故の相手の所有物の損害を補償する)
  • 人身傷害保険(自分や同乗者の身体の損害を補償する)
  • 車両保険(自分の車の損害を補償する)

これらの保険と、いくつかのサービス(事故対応、示談交渉、ロードサービス等)が合体して、ひとつの自動車保険ができています。

自動車保険を構成する保険

そして、自損事故の中身によって、使う保険は異なります。

下表に、自損事故の損害のパターン毎に整理しました。

損害のパターン 役に立つ保険
運転者が死傷したとき
  • 人身傷害保険
  • 搭乗者傷害保険
  • 自損事故保険
同乗者が死傷したとき
  • 対人賠償保険
  • 人身傷害保険
  • 搭乗者傷害保険
  • 自損事故保険
  • 自賠責保険
自分の車が壊れたとき 車両保険
他人の所有物を壊したとき 対物賠償保険
自分の所有物を壊したとき 車は車両保険。
それ以外の所有物(家屋等)は補償外。

表に登場した保険のうち、「同乗者が死傷したとき」の自賠責保険というのは、上で説明した強制保険です。

自損事故で自賠責保険(強制保険)が役に立つのは、このパターンだけです。

上の表で名前の出た保険について、簡単にご案内します。

上表に名称が出てきた保険のうち、自賠責保険以外は、任意保険を構成する保険です。

任意保険の補償内容を検討するときに、頭に置いてください。

人身傷害保険

車に乗っていた運転者・同乗者が、亡くなったりケガをしたときの、損害を賠償する保険。

治療費を含めて、事故によるケガを原因とする損害に、幅広く対応します。

  • 治療費などの実費
  • 働けない間の収入
  • 亡くなったり後遺症により失った、将来の収入
  • 精神的な損害に対する慰謝料

「保険に登録している車を運転中の事故」に限り補償するか、「それ以外の車を運転しているときの事故も含めて補償」するか、選ぶことができます。

人身傷害保険を基本補償(必須の補償)としている自動車保険も、けっこうあります。

搭乗者傷害保険

人身傷害保険と同じく、車に乗っていた運転者・同乗者がケガまたは死亡したときに、保険金が出ます。

人身傷害保険と違うのは、大きくは以下の2点です。

  • どうなったときに、保険金がいくら出るか、あらかじめ決まっている。
  • 保険金は、治療費・死亡や後遺障害に対する保険金に限られる。

人身傷害保険とかぶる部分が大きいので、近年加入率は下がっています。

ただし、保険金額があらかじめ決まっているので、損害の実費を補償する人身傷害保険より、保険金が早く出るという長所があります。

人身傷害保険のように、損害の実費を補償する保険は、損害額が確定しないと、保険会社に支払いを請求できません。

自損事故保険(特約)

搭乗者傷害保険をり自損事故に特化させた保険です。

車に乗っていた運転者・同乗者がケガまたは死亡したときに、保険金が出ます。その金額は、あらかじめ決まっています。

人身傷害保険の普及率が上がっていることもあってか、この保険(特約)を提供しない自動車保険は、けっこうあります。

対人賠償保険

自動車事故で他人を負傷または死亡させたときに、相手に損害を賠償するための保険です。

まず自賠責保険で損害賠償して、それでは足りなかったときに、対人賠償保険で埋め合わせます。

運転者とその家族は補償の対象外ですが、それ以外の同乗者はこの保険の対象になります(保険金をもらえます)。

運転者やその家族の、負傷や死亡の補償は、人身傷害保険とか搭乗者傷害保険が担当します。

対物賠償保険

他人の所有物(車や家屋など)を壊したときの、相手への損害賠償のための保険です。

当然のことですが、自損事故で、車を自宅の塀や壁などにぶつけても、この保険の対象外です。

というか、自宅の塀や壁の修理代は、自動車保険からは出ません。

車両保険

自分の車の、修理代や買い替え費用を補償する保険です。

補償の対象になる事故の範囲によって、「一般型」と「限定型(エコノミー型)」に分かれます。

「一般型」の方が、対象となる事故の範囲は広くて、その分保険料は高くなります。

ちなみに、自損事故は、「一般型」では補償されますが、「限定型(エコノミー型)」では補償の対象外です。

自損事故への対策として、入るかどうかや補償内容で迷うとしたら、車両保険でしょう。

上に複数の保険の名前をあげました。これらのうち、「対人賠償保険」「対物賠償保険」は、相手のあるすべての事故に備えられます。

自損事故が気にならなくても、入っておきたい保険です。

「人身傷害保険」は、交通事故による治療費等を、自動車保険で準備する必要があるなら、入っておきたい保険です。

自損事故が気になるというだけで、入る保険ではありません。

「搭乗者傷害保険」は、「人身傷害保険」に入る前提で、さらに強化したいときに入りましょう。

「自損事故保険」は、自損事故専用の保険ですが、最近、この保険を用意していない自動車保険が増えています。人身傷害保険の中に吸収されつつあります。

こんな風に考えを進めると、自損事故を特に意識して判断したい保険は、「車両保険」になります。

車両保険は、保険料への影響が大きいので、慎重に検討したいです。

車両保険で、自損事故の対策をするときに、補償内容は具体的にどうしたら良いですか?

車両保険の補償する事故の範囲を「一般型」に指定しましょう。

車両保険に入るときは、指定しなければならい項目がいくつかあります。その一つが、補償される事故の範囲です。

商品によって多少の違いはありますが、ほとんどは「一般型」と「限定(エコノミー)型」の2タイプから選ぶようになっています。

一般型

商品によっては「一般型」とは異なるネーミングになっています。名称の中に“一般”とか“ワイド”が入っていたら、このタイプです。

もう一つのタイプより補償範囲は広いですが、そのかわり、保険料も高くなります。

限定(エコノミー)型

補償される事故の範囲が、一般型より狭くなります。そのかわりに、保険料も安くなります。

一般型から削られているのは、おもに、事故の相手方がわからない事故(当て逃げ等)です。

自損事故(単独事故)も、補償対象から外されています。

自損事故は、相手方がわからないどころか、いないので(100%自分の責任なので)・・・

というわけで、

自損事故を重視するなら、「一般型」を選びましょう。

一般型を選んでも、補償されない事故

一般型は、自動車事故の多くをカバーしますが、補償されない事故もあります。

  • 無免許運転、酒気帯び運転などによって生じた損害
  • 地震、噴火、津波によって生じた損害
  • 詐欺または横領によって生じた損害
  • 元からあった欠陥、摩滅、腐食、さび、その他の劣化によって生じた損害
  • 通常使用の結果としても故障による損害
  • パンクなどのタイヤのみに生じた損害
  • 車体に定着されていない付属品の損害

なお、地震、噴火、津波による故障に備えるために、いくつかの自動車保険では、「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」が用意されています。

この特約は、車両保険にように、修理費用の実費を補償するのではなく、あらかじめ決められた一時金が保険から出ます。

自損事故で車両保険を使うと、次回更新で保険料が大きく値上がりします。

自動車保険を使わないで(保険金を受け取らないで)更新すると、等級が一つ上がります(ただし20等級が上限)。そして、保険料が少し安くなります。

ところが、車両保険を使うと、次回の自動車保険更新のときに、3等級または1等級ダウンして、保険料が値上がりします。

ダウンが3等級か1等級かは、故障とか修理代の大きさではなく、原因となった事故で決まります。

1等級ダウン事故の例

以下のような事故で車両保険を使うと、次回の更新のときに、事故1件につき1等級下がります。

  • 火災または爆発
  • 盗難
  • 騒じょうまたは労働争議に伴う暴力行為または破壊行為
  • 台風、竜巻、洪水、高潮またはその他の自然災害による水没・浸水
  • 落書またはいたずら等の契約自動車に対する直接の人為的行為
  • 飛来中または落下中の他物との衝突

これらの他に、偶発的な事故も、1等級ダウンになることが多いです。

3等級ダウン事故

車両保険を使う事故で、1等級ダウン事故にならなければ、3等級ダウンになります。

つまり、3等級ダウン事故は、広範囲に渡ります。

他人をケガまたは死亡させたり、他人のものを壊したり、自分の車を壊したら、ほぼ3等級ダウン事故になります。

ほとんどの自損事故は、3等級ダウンになりそうですね・・・

当て逃げされるなどは、こちらに過失がなくても、3等級ダウン事故になります。

自損事故と免責金額はかかわりが深いです。慎重に判断しましょう。

上で説明したように、車両保険を使ったら、その後保険料が上がります。

ということは、安い修理代のために車両保険を使うと、損になる危険があります。

経済性を重視すると、修理代が安いときは、車両保険を使わない方が良さそうです。しかし、せっかく保険料を払っているのに、車両保険を使えなのは納得できません。

そこで、免責金額です。

免責金額とは

車両保険に入るときに、免責金額を設定すると、修理代のうち、設定した金額までは自己負担することになります。

免責金額5万円に設定していたら、修理代が20万円のときなら、5万円は自腹を切ります。車両保険から出るのは15万円です。

修理代が免責金額以下のときは、車両保険を使わないことになります。

自損事故は免責金額とからみやすい

車庫や駐車場での自損事故や、曲がるときの自損事故などは、低速なので、修理代は数万円程度に収まるかもしれません。

通常、免責金額で指定できる金額は5万円~10万円です。よって、免責金額を設定すると、これらの修理は、自己負担になりやすいです。

というように、車両保険に免責金額を設定したら、かんじんの自損事故のときに、役に立たないかもしれません。

(自損事故に限らず)修理代が安いときは自腹を切る、という割り切りが必要になるかもしれません。

以下のいずれかに当てはまる車は、車両保険に入れない危険があります。

どんな車でも車両保険に入れるわけではありません。損保会社ごとに、補償を引き受ける条件を設けています。

特に、ダイレクト(ネット通販)型の方が、条件は厳しいです。

代理店型自動車保険の場合、原則お断りでも、代理店経由で要望すると、引き受けることがあります。

以下で、ありがちな、引き受けてもらえないケースをご案内します。

車両が古すぎる

型式や年式で弾かれることもあれば、初度登録年月(最初にナンバーを割り振られた年月)で弾かれることもあります。

保険会社のウェブサイトの見積もり機能で、車の型式を選択できないときは、この理由で弾かれている可能性が高いです。

車の時価額が低い

「時価額」とは、中古車市場で取引されている価格です。

車両保険の保険金額は、時価額をもとに設定されます。よって、時価額がゼロかゼロに近いと、保険として成立しなくなります。

加入する側にとっても、入る意味がなくなりますし・・・

車両料率クラスが高い

自動車保険では、モデルごとに「事故の起きやすさ」や「事故になったときの損害の大きさの見込み」を、数値化しています。

これが車両料率クラスで、保険料を決めるときに、参照される数値の一つです。

スポーツカーとか高級車は、そうした危険性が高いので、車両料率クラスが高くなります。

車両料率クラスが高くなると、保険料も高くなります。それどころか、車両料率クラスがある程度以上高くなると、車両保険の加入を断わられることがあります。

ちなみに、車両料率クラスは、損害保険料率算出機構という独立した組織が、統計を踏まえて算出しています。ただし、保険会社によっては、これをもとに、独自の車両料率クラスを算定しているようです。

自動車保険の無料一括見積りサービスはいくつかありますが、以下の理由で、こちらのサービスをおすすめします。

  • 1回入力すれば、複数の気になる自動車保険の見積りが、一気に作成されます。
  • 参加している保険会社数が多く、おすすめしたい自動車保険がすべて含まれています。
  • 『保険見直し本舗』(全国300店舗以上)を展開する株式会社ウェブクルーによるサービスなので、安心感がある。
  • サイトの利用はもちろん無料。
  • サイトは使いやすく、各損害保険会社とのつながりはスムーズ。

自動車保険サイトの1社分の情報を入力すると、おもな自動車保険の保険料が図のように一覧表示されます。

その後、個々の自動車保険のホームページに移動して、さらに条件を変えて、試算をやり直すこともできます。

このサイトの利用者を対象としたアンケート調査によると、月々の保険料が平均して約25,000円安くなったそうです。

読まれている記事
更新情報