代理店型の自動車保険の仕組みや選び方について、実践的にご説明します。

自動車保険の代理店は、どんな役割を果たしますか?代理店はある方が良いですか?

代理店は、損害保険の営業(保険契約の獲得)とアフターサービスを担当します。

損害保険会社は、大きく、代理店型とダイレクト(ネット通販)型に分けられます。

明治〜昭和に創業された、伝統のある損保会社は、ほとんどが代理店型です。

代理店は損保会社と契約しており、損保商品を販売すると、見返りとして販売手数料を受け取ります。

代理店のメインの仕事は、保険契約の獲得です。

代理店型損保とダイレクト型損保

たとえば、自動車保険だと、1年更新が主流です。

代理店にとっては、一度販売したら終わりではなく、1年毎に更新=再購入してもらわなければなりません。

そのため、契約を継続してもらうためのアフターサービス全般が、代理店の仕事になります。

たとえば、加入・更新、契約変更、保険金請求などの手続きや、問い合わせ対応を代理店がおこないます。

ちなみに、代理店型であっても、事故対応は損保会社本体が対応をおこないます。加入者の窓口も、事故のたびに損保会社本体で選任されます。

消費者にとっての代理店のメリットは、対面で説明し、疑問に答えてくれることです。

諸手続きを代理店がやってくれることに対しては、賛否両論あります。

書類作成に自信がない人なら、代理店の担当者が、対面で手続きしてくれることに、安心を覚えるかもしれません。

しかし、代理店の営業時間にとらわれず、休日や深夜など、自分の都合の良いときに手続きしたい人もいるようです。

そう考えると、誰にとっても有益な代理店のメリットは、次の2つではないでしょうか。

  • 補償プランの提案。
  • 新しい補償・サービスの案内。

代理店があることのデメリットは、保険料が高くなることと、選択の幅が狭くなることです。

次に、代理店があることによるデメリットです。

2つに分けて説明します。

保険料が高くなる

代理店がある自動車保険=代理店型自動車保険と、代理店がない自動車保険=ダイレクト(ネット通販)型自動車保険の、保険料の平均を比較したのが、下のグラフです。

代理店型自動車保険とダイレクト型自動車保険の、保険料の平均を比較

6通りの年齢・等級の組み合わせで比較しましたが、そのすべてで、代理店のない自動車保険のほうが安くなりました。

代理店型自動車保険の保険料には、代理店の従業員の給料や、代理店の店舗の賃料・維持費などが含まれています。

そのため、代理店型自動車保険は、保険料が高くなる構造になっています。

消費者の選択の幅が狭くなる

一つの保険代理店が取り扱うことのできる保険会社の数は限られます。複数の代理店を渡り歩けば、いろいろな商品を見積もり・比較できますが、かなり面倒です。

結果的に消費者の選択の幅が狭くなります。

また、代理店は営業部隊でもあるので、自分たちが売りたい商品やプランを強めに勧めてきます。

自分のペースで、たくさんの商品を比較して選びたい、という方々には向いていません

事故対応は、損保会社本体がおこないます。代理店がなくても、支障はありません。

自動車保険に入るのは、万が一事故を起こしたときのためです。

そういう意味で

事故対応の品質こそが、自動車保険の品質と言えます。

そして、代理店型自動車保険でも、事故対応(初期対応〜示談交渉〜保険金支払い)は損保会社本体がおこないます。

事故対応のプロセスには、損害の大きさの調査とか、事故の相手方との示談交渉などがあり、専門的な知識・経験を要求されます。

そのため、加入者への窓口を含めて、損保会社本体が担当します。

起こした事故のことで代理店に連絡したら、親切に対応してくれます。しかし、損保会社につなぐだけです。

代理店がある損保会社の方が事故対応の品質が高い、ということはありません。あくまでも、損保会社自身の実力次第です。

事故対応で代理店はわき役です。ただし、気の利いた代理店なら、加入者が不安やストレスを感じていないかを確認するために、事故対応中に連絡をくれます。

もちろん、こちらに不満や要望があれば、損保会社の担当者に伝えてくれます。

こうした気遣いは、代理店型ならではです。

代理店型の損保会社は、会社の規模が大きいほど、中身も優れているのでしょうか?

自動車保険の補償内容は、どの商品を選んでも、大きな違いはありません。

自動車保険は、車社会を支える保険として、どの商品を選んでも失敗にならないよう、似たような補償内容になっています。

商品ごとの違いが出るのは、基本的な補償を強化する特約やサービスです。

他社の自動車保険に切りかえるときに、前の保険の等級を次の保険に引き継ぐことができます。こんなことが可能なのは、補償内容が業界内で共通になっているからです。

会社の規模が大きくても、自動車保険のサービス品質が優れているわけではありません。

自動車保険の補償内容は、商品による差が小さいです。しかし、実際に事故が起こったときの対応力には、損害保険会社ごとの差が出ます

そして、知名度が高くて規模の大きな損保会社の方が、品質が高いとは限りません。

事故対応の品質を比較するには、規模が大きくて公正なアンケート調査が参考になります。

J.D.パワーによる自動車保険顧客満足度調査

国際的なマーケティング調査会社J.D.パワーによる、自動車保険顧客満足度調査です。

この調査の、事故対応部門の、過去2年間のランキングを、下表にまとめました。

赤字がダイレクト(ネット通販)型、青字が代理店型の損害保険会社です。

会社名 2023年 2022年
ソニー損保 1位 1位
東京海上日動 2位 7位
AIG損保 3位 2位
損保ジャパン 4位 3位
三井住友海上 5位 4位
イーデザイン損保 6位 8位
あいおいニッセイ同和 7位 5位
アクサダイレクト 8位 9位
SOMPOダイレクト 9位 6位
三井ダイレクト損保 10位 12位
チューリッヒ保険 10位 10位
SBI損保 12位 11位
  • セゾン自動車火災は、SOMPOダイレクトに商号変更しました。

大手損保4社(あいおいニッセイ同和、損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上)は、さすがに2年続けて7位以内に入っています。

とは言え、首位は連続してダイレクト(ネット通販)型ですし、他にも何社かは大手と対等の評価を得ています。

オリコンによる自動車保険顧客満足度調査

様々な分野のランキングを発表しているオリコンは、自動車保険のランキングも、毎年発表しています。

オリコンのランキングは、部門数が多いです。多すぎてかえって分かりにくいです。

そこで、事故対応に関連している3つの部門での、各社の獲得ポイントを集計し、順位を割り振り直しました。

赤字がダイレクト(ネット通販)型、青字が代理店型の損害保険会社です。

会社名 2024年 2023年
AIG損保 1位 1位
ソニー損保 2位 2位
日新火災 3位 10位
東京海上日動 4位 4位
あいおいニッセイ同和 5位 6位
SOMPOダイレクト 6位 7位
三井住友海上 7位 9位
イーデザイン損保 8位 3位
三井ダイレクト損保 9位 圏外
損保ジャパン 10位 5位

このランキングでは、部門ごとに10位までが公表されます。

大手損保4社(あいおいニッセイ同和、損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上)は、さすがに2年続けて10位以内に入っています。

しかし、トップ3は2年とも中堅の損保会社が占めています。

一定の品質のサービスを、全国どこでも提供できるのは、大手損保の強みです。知り合いの代理店が無いなら、大手損保を選ぶメリットがあります。

代理店型自動車保険を検討しているが、付き合いのある代理店はまだないというケースでは、規模の大きな損保会社のほうが、スムーズに運びます。

規模の大きい損保会社の方が、代理店数も多いからです。

例として、大手の東京海上日動と中堅の日新火災の代理店数を、下表にまとめました(2023年度末)。

東京海上日動 44,761店
日新火災 10,549店
郵便局 23,645局
セブンイレブン 21,402店

東京海上日動くらい代理店があれば、どこにお住まいでも最寄りの代理店が見つかるでしょう。

また、相性の良い代理店を捜すことも、やりやすくなります。

大きな損保会社の方が、経営状態はしっかりしていますか?安心して加入できますか?

1年更新の自動車保険に限ると、損保会社の経営状態を、そんなに気にすることはありません。

保険会社の経営状態に不安があっては、困ります。

とは言え、1年更新の自動車保険なら、他の保険商品ほど心配することはありません。

  • 損保会社が破綻しても、3ヶ月間は保険金全額が、それ以降は80%が保証される。
  • 次の更新のとき(数か月後)に、簡単に他社に乗り換えられる。

損保会社が破綻したら、その後3ヶ月間は、損害保険契約者保護機構が保険金満額を保証してくれます。

その後も、救済会社が見つかるまで、保険金の80%を保証してくれます。

そして、加入していた損保会社が破綻しても、1年契約なら、あっという間に満期が来ます。

テレビ・ネット・新聞などでの報道に、気をつけましょう。

保険会社の経営安定性を判断する材料として、次の2つがよくあげらけます。

  • ソルベンシー・マージン比率
  • 企業格付け

しかし、現実的には、これらの指標は当てにできません。というのは、➊ソルベンシー・マージン比率は保険会社の方である程度操作できる数値ですし、➋企業格付けは取得していない保険会社が多いからです。

結局のところテレビ・ネット・新聞などで、加入している損保会社の悪い報道があったらすぐ対応する、という常識的な対策が、一番有効かもしれません。

なお、ソルベンシー・マージン比率については、ソルベンシー・マージン比率で、保険会社の体力をチェックで、詳しく説明しています。

おすすめの代理店型自動車保険はありますか?

知り合いに、頼りになりそうな代理店があるなら、代理店が勧める自動車保険が最有力候補です。

代理店型自動車保険の場合、事故の対応(初期対応〜示談交渉〜保険金支払い)は損保会社本体が窓口になります。

しかし、それ以外では、原則として代理店が窓口になります。損保会社本体より、代理店の担当者と接っする機会のほうが、はるかに多くなります。

ですから、親切で信頼できる代理店があれば、その縁を大切にして、その代理店が勧める商品を第一の候補としましょう。

知っている代理店が無いのなら、こちらが有力候補です。

損保会社や商品の品質で代理店型自動車保険を選ぶなら、次の2つをおすすめします。

  • 損保ジャパン
  • 東京海上日動

この2社は、国内の売上高1位と2位です。下は、おもな損保会社16社の、売上高ランキングです。

損保会社売上高ランキング

大手損保4社の中でも、1位2位は飛び抜けています。その分、代理店のネットワークも大きいです。

良い代理店を見つけることの大切さ、難しさを考えると、上の2社は無難です。

ただし、大都市圏にお住まいであれば、下位の損保会社の代理店も近くにあるかもしれません。そうなると、選択肢は広がります。

代理店型自動車保険とダイレクト型自動車保険を比較するときに、何に注意したらよいでしょう?

代理店の有無が影響するのは、➀補償プランを作成・変更するときと、➁解決まで長引く事故のときです。

ある程度長く自動車保険を続けていて、事故で保険を使った経験をお持ちであれば、代理店は必要不可欠ではありません。

しかし、知識や判断に不安があるなら、代理店は頼りになります。損保会社本体に直接問い合わせるより、代理店の方が親切であることが多いです(そうでないなら、代理店を通す意味はありませんが・・・)。

いずれにしても、代理店が必要か不要かは、それぞれの方にご判断になります。

ただし、現在、代理店型に加入していながら、代理店とのやり取りは電話と郵送のみという方は、ダイレクト(ネット通販)型にすぐにでも移行できます。

ダイレクト型の中には、代理店型の大手損保系列の損保会社もあります。

代理店型の損保会社と、ダイレクト(ネット通販)型の損保会社はライバル関係にありますが、それだけの関係ではありません。

東京海上日動、損保ジャパン、あいおいニッセイ同和、三井住友海上というような代理店型の大手損保は、それぞれ系列のダイレクト(ネット通販)型損保会社を設立しています。

代理店型の大手損保系列のダイレクト(ネット通販)型損保会社には、以下があります。

損保グループ 系列のダイレクト型
東京海上グルーブ
(東京海上日動)
イーデザイン損保
SOMPOグループ
(損保ジャパン)
SOMPOダイレクト
MS&ADグループ
(三井住友海上、あいおいニッセイ同和)
三井ダイレクト損保

これらのダイレクト(ネット通販)型の損保会社は、グループ内の親会社の損害調査ネットワークを使うことができます。

たとえば、イーデザイン損保であれば、東京海上日動の系列会社である東京海上日動調査サービス(株)に、損害調査業務を委託しています。

事故対応が代理店型より手厚いダイレクト型自動車保険が、登場しています。

ダイレクト(ネット通販)型自動車保険の品質は年々向上しています。

そして、部分的に代理店型の上を行く商品が、いくつか登場しています。

事故現場駆けつけ支援サービス(サービス名は商品により異なります)を提供する自動車保険です。

自動車事故のときに、警備保障会社の警備員が駆けつけて、現場でやるべきことを代行・支援してくれます。

事故現場で、わたしたちがやらなければならないこと(関係各所への連絡、示談交渉のための情報収集など)のほとんどを、代行してくれます。

損保会社に対する、事故状況についての連絡もやってくれます。

このサービスは、すべての加入者に向けて、無料で提供されます。

このサービスを提供しているのは、以下の損保会社です。

  • イーデザイン損保
  • 共栄火災
  • セコム損保
  • SOMPOダイレクト
  • ソニー損保
  • 損保ジャパン
  • 楽天損保

共栄火災と損保ジャパンは、このサービスを受けるには、有料の特約を付加しなければなりません。

ちなみに、ロードサービスにも、現場に駆けつけて応急処置をしてくれるサービスがあります。

そのサービスは、あくまでも車両トラブルが対象です。事故対応ではありません。

せっかくダイレクト型を検討するなら、もっともオトクな選択を!

代理店型の自動車保険では、多かれ少なかれ、代理店との信頼関係がもとになります。

人と人の関係が入り込むので、片っ端から見積もりをとって比較する、という探し方をしにくいです。

それに比べると、ダイレクト(ネット通販)型の探し方は、ビジネスライクです。

というか、性能と安さ重視の割り切った選び方をできるのが、ダイレクト(ネット通販)型の良さかもしれません。

上で、親しみやすいと思われるダイレクト(ネット通販)型損保をいくつかご案内しました。

それぞれ、魅力と強みを持った自動車保険です。

とは言え、できることなら、検討の初期段階で候補を絞り込むより、できるだけ多くの見積もりを集めることをおすすめします。

よく知らない損保会社の見積もりを、数多く集めるのには、手間と時間がかかりそうです。

しかし、心配ご無用です。自動車保険の無料一括見積りサービスを利用すると、1回の入力で、主な自動車保険の見積もりが、一気にお手元に集まります。

自動車保険の無料一括見積りサービスはいくつかありますが、以下の理由で、こちらのサービスをおすすめします。

  • 1回入力すれば、複数の気になる自動車保険の見積りが、一気に作成されます。
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  • サイトは使いやすく、各損害保険会社とのつながりはスムーズ。

自動車保険サイトの1社分の情報を入力すると、おもな自動車保険の保険料が図のように一覧表示されます。

その後、個々の自動車保険のホームページに移動して、さらに条件を変えて、試算をやり直すこともできます。

このサイトの利用者を対象としたアンケート調査によると、月々の保険料が平均して約25,000円安くなったそうです。

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