どの自動車保険でも、傷害保険(人身傷害保険、搭乗者傷害保険など)が用意されていますね。必要なのでしょうか?

人身傷害保険はとても多機能です。治療費だけでなく、死亡保険金、休業補償、慰謝料なども補償できます。

自動車保険には、複数の傷害保険が用意されていますが、その中心は人身傷害保険です。

人身傷害保険は、1998年に発売された、自動車保険の中では新しい保険です。それだけに、多機能な保険です。
名称は傷害保険となっていますが、ケガの治療費だけでなく、死亡保険金、休業補償(治療中の収入の補償)、慰謝料などもカバーしています。

つまり、交通事故でケガをしたときに発生するであろう(こちらの)損害を、一通りカバーしています。
新しく開発された保険だけに、多機能です。

人身傷害保険は優れた保険ですが、付ける必要があるかは別問題です。以下を参考に、要否をご判断ください。

多機能な人身傷害保険ですが、誰にでもおすすめできるかというと、そう単純ではありません。

というのは、他の保険と補償が重複する可能性が高いからです

重複しやすいのは、生命保険・医療保険

人身傷害保険は、亡くなっても、治療が必要になっても、保険金が出ます。よって、生命保険や医療保険と重複します。

ただし、完全に重複するわけではなく、重複する部分としない部分に分かれます。
それぞれの機能を、下表に整理しました。

機能 人身傷害保険 医療保険 生命保険
交通事故 入院 ×
通院 × ×
休業補償 × ×
慰謝料 × ×
死亡 ×
その他のケガ 入院 × ×
通院 × × ×
死亡 × ×
病気 入院 × ×
通院 × ×
死亡 × ×

このように、人身傷害保険は、交通事故の補償としては最強です。
しかし、当然ながら、交通事故以外のときには、役に立ちません。

他方、医療保険や死亡保険は、機能の数では劣るものの、ケガにも病気にも幅広く対応できます。

どちらかを選ぶなら、生命保険・医療保険

保険を重複させたくなくて、どちらかを選ぶなら、優先すべきは生命保険と医療保険です。

というのは、ほとんどの人にとって、事故による負傷より、病気への対策の方が、重要性がずっと高いからです

下図は、厚生労働省『人口動態調査』にもとづく、2016年の主な死因をまとめたグラフです。

2016年の主な死因のランキング

交通事故は、グラフの「不慮の事故」に含まれますが、全体の3%程度です。
一方、「不慮の事故」「自殺」「老衰」以外は、何かの病気です。つまり・・・

交通事故より、病気への対策の方が、優先度ははるかに高いです!

ですから、どちらかを選ぶなら、人身傷害保険より、生命保険と医療保険の組み合わせを、おすすめします。

人身傷害保険を、前向きに検討して欲しい方々

以上のことを踏まえると、人身傷害保険を積極的におすすめしたいのは、以下のような方々です。

  • 生命保険や医療保険に加入していないか、加入していても保障が薄い。
  • 仕事柄、車を運転することが多い。
  • 車を運転する時間や頻度が、普通の人よりかなり多い。
  • 人身傷害保険の休業補償や慰謝料に、特に魅力を感じる。

生命保険・医療保険と組み合わせやすいのは、搭乗者傷害保険です。

自動車保険の傷害保険は、人身傷害保険の他に、搭乗者傷害保険が用意されています。
2つの傷害保険の機能の違いは、下の人身傷害保険と搭乗者傷害保険の使い分けで詳しく説明しています。

簡単に言うと、搭乗者傷害保険は少額の死亡保険金と治療のための保険金からできている、シンプルな保険です。
人身傷害保険と比べると、機能面ではかなり劣りますが、保険料を低く抑えることができます

そのため、生命保険と医療保険と組み合わせても、交通事故の場合の上乗せ分として割り切りやすいです。

医療保険では出ない通院治療費が、搭乗者傷害保険なら出るので、欠点を補うことになります。

いろんな自動車保険を調べていると、人身傷害保険が必須になっている自動車保険が、けっこう見つかりました・・・

保険料が高い自動車保険ほど、人身傷害保険を必須の補償とする傾向が強いです。

日本の法律が改正されて、1998年から自動車保険が自由化され、それまでより販売競争は激しくなりました。競争を有利に戦うために、当時の東京海上火災が投入したのが人身傷害保険です。

人身傷害保険は好評を得て、現在では、ほぼすべての損保会社が人身傷害保険を販売しています。それどころか、半分強の自動車保険が、人身傷害保険を必須の補償に組み込んでいます(他は特約として提供)。

なお、人身傷害保険を必須の補償に組み込んでいるのは、保険料設定が高めの自動車保険に集中しています。代理店型自動車保険のほとんどと、ダイレクト(ネット通販)型自動車保険の一部です。

人身傷害保険を必須の補償としている自動車保険は、一概に悪い保険とは言えませんが、注意が必要です。

本来、自動車保険の基本補償(必須の補償)は、誰にでも必要になりそうな補償に限られるべきです。対人賠償保険とか対物賠償保険とか。
さもないと、多くの人に、必要ではない補償を売りつけることになってしまいます。

必要とは限らない補償を基本補償に組み込む姿勢は、意地悪な見方をすれば、金儲け優先に見えなくもありません。
そして、人身傷害保険は、誰にでも必要な保険とは言いにくいです。

もっとも、人身傷害保険そのものは優れた保険だし、そんなに保険料が高いわけではありません。この保険が基本補償に入っているだけで、金儲け優先と決めつけるのは乱暴でしょう。

ただし、人身傷害保険以外にも、必須とは考えにくい保険や特約を基本補償に組み込んでいたら、それは要注意です。金儲け優先の危険性が高いです。

良心的な自動車保険ばかりではないのですね・・・

人身傷害保険の他に、搭乗者傷害保険をよく見かけます。この2つの役割の違いとか使い分け方を、教えてください。

人身傷害保険の多機能さに魅力を感じるなら、搭乗者傷害保険のことは無視しても良いです。

人身傷害保険は、1998年に発売された新しい保険です。それまでの、自動車保険の傷害保険といえば、搭乗者傷害保険でした。

新しいだけあって、人身傷害保険の方が、大幅に多機能です。
それぞれの補償範囲を下表に整理しました。

人身
傷害保険
搭乗者
傷害保険
死亡保険金
ケガの治療費
休業補償 ×
慰謝料 ×
保険金額 損害の実費を補償。 加入・更新のときに
決めた金額を補償。

細かく比較すると、それぞれに強み・弱みがあります。
とは言え、ほとんどの人にとっては、どちらかを選ぶとしたら、人身傷害保険を選ぶのが一般的でしょう。

傷害保険を付けたいが、保険料をできるだけ安くしたいなら、搭乗者傷害保険は"あり"。

搭乗者傷害保険の長所の一つは、保険料を安くできることです。

人身傷害保険は多機能な保険なので、保険料を安くするにも、限度があります。
一方の搭乗者傷害保険は、もともとがシンプルな仕組みなので、最低限の補償にとどめると、保険料も安くなります。

どうしても必要ではないけれど、安心のために最低限の傷害保険を確保したい、というニーズには、搭乗者傷害保険が向いているかも知れません。

人身傷害保険と搭乗者傷害保険には、それぞれ強み・弱みがあるので、組み合わせるメリットはあります。

損保会社によっては、人身傷害保険と搭乗者傷害保険の組み合わせを推奨しています。

保険としての機能の豊富さでは、上の通り人身傷害保険か圧倒しています。搭乗者傷害保険の出る幕はありません。

しかし、地味ながら、搭乗者傷害保険の方が勝る点もあります。それは、保険金がスピーディーに出るという点です。

人身傷害保険は、損害の実費を補償する保険なので、損害の金額が確定した後でないと、保険金が出ません。
一方の搭乗者傷害保険は、保険金額が決まっているので、治療中でも保険金を受け取ることが可能です。

人身傷害保険では、補償される事故の範囲を、「車内のみ補償」にするか「車内外の補償」にするか、選べます。どちらがよいですか?

補償の範囲をやたらと広くしないのが、保険を使いこなすコツです。人身傷害保険の補償の範囲は「車内のみ補償」が原則です。

保険の検討が真剣味を増すほど、あれもこれも気になって、補償の範囲を広げたくなるかもしれません。しかし、補償の範囲を広くすると、デメリットもあります。

自動車保険の補償は、原則として、自動車を運転しているときの補償から検討を始めましょう。そういう補償が「車内のみの補償」です。

「車内のみの補償」と「車内外の補償」の補償内容の違い

「車内のみの補償」と「車内外の補償」の補償内容の違いを下にまとめました。

車内のみ補償 車内外の補償
保険契約車両での事故
他の車に乗車中の事故 ×
歩行中や自転車での事故 ×

もちろん、保険料は、補償範囲の広い「車内外の補償」の方が高くなります。

補償範囲を広げ過ぎると、後々の請求漏れが心配

自動車保険に限らず、保険に加入するときに気をつけていただきたいのが、保険金の請求漏れです。保険会社から保険金をもらえるのに、加入している保険の内容を忘れてしまい、請求を漏らしてしまうことがあります。

10年くらい前に、膨大な件数の保険金不払いが発覚し、社会問題になりました。それ以降、保険会社は保険金不払いの防止を心がけるようになっています。
それでも、加入者が保険金の請求をやらなかったら、防ぎようがありません。

補償の範囲を広げるとしても、どうしても欲しいものだけにしましょう。その場の勢いで何となく補償を広げると、後々忘れる危険度が高まりそうです。

近所に危険な交差点があるとか、お子さまを頻繁に自転車に乗せるなどの事情があれば、「車内外の補償」をご活用ください。

ただし、「車内外の補償」は、以下のような不安を抱える方たちには、役に立ちます。

  • 子供の通学路に、車の行き来が激しい道路があって、事故が心配。
  • 近所に危険な交差点があって、歩行中の事故が心配。
  • 毎日、幼い子供を乗せて自転車に乗るけれど、ドキッとすることがある。
  • 友人・知人と長距離ドライブに、ときどき出かける。

人身傷害保険は、契約した人だけでなく、その家族も補償してくれます。

「車内のみの補償」と「車内外の補償」の保険料の差は、そんなに大きなものではありません(1ヵ月あたり100~200円程度)。保険金請求漏れに気をつけて、積極的に「車内外の補償」をご活用ください。

自動車保険の無料一括見積りサービスはいくつかありますが、以下の理由で、こちらのサービスをおすすめします。

  • 1回入力すれば、複数の気になる自動車保険の見積りが、一気に作成されます。
  • 参加している保険会社数が多く、おすすめしたい自動車保険がすべて含まれています。
  • 『保険見直し本舗』(全国300店舗以上)を展開する株式会社ウェブクルーによるサービスなので、安心感がある。
  • サイトの利用はもちろん無料。
  • サイトは使いやすく、各損害保険会社とのつながりはスムーズ。

自動車保険サイトの1社分の情報を入力すると、おもな自動車保険の保険料が図のように一覧表示されます。

その後、個々の自動車保険のホームページに移動して、さらに条件を変えて、試算をやり直すこともできます。

このサイトの利用者を対象としたアンケート調査によると、月々の保険料が平均して約25,000円安くなったそうです。

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