車両保険はどんな保険ですか?できるだけ付けた方が良いですか?

車両保険は、自分の車の損害に備える保険です。自動車保険の一部分です。

車両保険は、自分の車の修理代や買い換え費などを準備できる保険です。

車両保険は、独立した保険商品ではありません。「任意保険」とされる自動車保険を構成する保険の一つです。

ちなみに、自動車保険を構成する保険には、以下があります。

  • 対人賠償保険(事故の相手の身体の損害を補償する)
  • 対物賠償保険(事故の相手の所有物の損害を補償する)
  • 人身傷害保険(自分や同乗者の身体の損害を補償する)
  • 車両保険(自分の車の損害を補償する)

これらの保険と、いくつかのサービス(事故対応、示談交渉、ロードサービス等)が合体して、ひとつの自動車保険ができています。

自動車保険を構成する保険

以下に当てはまると、車両保険から保険金が出ます。

車両保険には、いくつかのプラン(通常は2〜3プラン)や特約が用意されています。

それによって、補償される範囲に差が出ます。

事故で、車の修理や買い替えが必要になったとき

事故で、車両が故障したりキズがついたときに、その修理費用や買い替え費用を、保険金として受け取ることができます。

保険金を受け取るための、面倒な条件とかはありません。ただし、以下のいずれかに当てはまるときは、例外的に、保険金は出ません。

  • わざと起こした事故
  • 危険な運転による事故(無免許、酒気帯び、競技、曲技、違法改造など)
  • 戦争・内乱などの社会的な混乱による事故
  • 地震・噴火・津波などの大規模な天災による事故
  • 通常使用によるトラブル(経年劣化等)

ただし、地震・噴火・津波など大規模災害のときに、車両保険の保険金は出ないけれど、かわりに一時金が出る自動車保険はあります。

交通事故以外のトラブルでも保険金は出る

車両保険のプランによっては、原因が交通事故以外であっても、幅広くカバーしてくれます。たとえば・・・

  • 駐車中のトラブル(当て逃げ、落書き、イタズラ、窓ガラス破損など)。
  • 飛来物、落下物(小石、看板など)がぶつかったことによるキズ。
  • 洪水、台風、火災などによる損害。
  • 発火、爆発。
  • 盗難。

自分の過失による故障・キズも補償可能

車同士の事故の場合、それぞれの車の修理代を、それぞれの責任割合に応じて負担します。

つまり、こちらの修理代について、相手が負担してくれるのは、相手の責任割合の分までです。

事故で相手の責任割合が3割なら、相手が賠償してくれるのは、修理費用の3割だけです。残る7割は、こちらの自腹になります。

両保険に入っていれば、自腹の分を、保険でカバーできます。

事故の責任が100%こちらにあったとしても、相手がいない「自損事故」でも、車両保険で補償できます。

車両保険では、補償される事故の範囲を、加入者が指定するようです。何を基準に判断すれば良いですが?

車両保険では、補償される事故の範囲を指定しなければなりません。商品によっと異なりますが、2つか3つのタイプに分かれています。

車両保険に入るときには、いくつかのことを指定しなければなりません。中でも重要なのが、補償される事故の範囲の指定です。

事故の範囲の指定方法は、だいたいの商品では、「一般型」と「限定型(またはエコノミー型、車対車+A型)」の2択になっています。

少数ですが、一部の自動車保険では、「一般型」「車対車+A型(限定型)」「車対車型」の3択になります。

事故 タイプ
一般型 限定型 車対車
他車との衝突・接触
火災・爆発 ×
盗難 ×
台風・洪水・高潮 ×
落書・いたずら ×
物の飛来・落下 ×
自転車との衝突・接触 × ×
電柱・ガードレール等に衝突 × ×
あて逃げ × ×
転覆・墜落 × ×

範囲の広さは「一般型」>「車対車+A型(限定型)」>「車対車型」となります。

特別な理由がない限り、一般型をおすすめします。

日常生活に車は必要だけど、修理の費用負担が心配という方々は、一般型をおすすめします。

故障の原因が何であれ、修理しなければならないですから、事故原因によって保険金が出ないのは困ります。

限定型は中途半端

車両保険は、保険料が高くなりがちなので、負担感を下げるために限定型が提供されていますが、ぶっちゃけ中途半端です。

限定型を選ぶと、「自転車との衝突・接触」「電柱・ガードレール等に衝突」「あて逃げ」「転覆・墜落」による故障では、保険金が出ません。

これらの原因によるトラブルを、防止しやすいわけではないし、修理代が安くなりやすいわけでもあれません。

限定型は、合理的な理由なく、ただ保険料の安いプランを用意するために、無理やり作り出せされたようなタイプです。

よって、車両保険が必要な人には、一般型をおすすめします。

限定型を選ぶとしたら・・・

限定型を選ぶとしたら「必要というほどではないけれど、気休めに車両保険に入りたい」とか「一般型を選びたいけれど、保険料が予算オーバーになる」というような場合でしょう。

車両保険の保険金額は、加入者が指定するようになっています。どのように決めるのが良いですか?

車両保険の保険金額とは、車両保険から出るお金の上限額のことです。

車両保険から出る金額は、修理にかかった実費です。保険金額が100万円となっていても、修理代が3万円なら、保険から出るのは3万円です。

もし、保険金額が100万円のところ、修理代とか買い替え費用が150万円になっても、車両保険から出るのは100万円です。

上限の100万円を超えた50万円は、自腹を切ることになります。

保険金額は、車の時価相当額

車両保険の保険金額を、選択肢から選ぶようになっていますが、金額の範囲は決まっています。

選択肢として示される金額は、対象となる車の時価相当額(見積もり時点での、世の中での取引価格)に近い金額です。

年式が古かったり、不人気のモデルであれば、時価(世の中での取引価格)は安くなります。そういうモデルは、車両保険で指定できる保険金額も低くなります。

もっとも、車両保険に入るときや更新するときに決めた保険金額は、その保険契約の期間中は、下がりません。保険期間が終わって(=満期になって)更新するタイミングで、保険金額を見直します。

保険金額を選ぶときの留意点

車両保険の保険金額は、車種とか年式とかグレードなどで、概ね決まります。

にもかかわらず、加入する人が保険金額を選ぶようになっているのはなぜでしょうか?

その理由は、車両の本体価格が同じでも、オプション(エアコン、カーオーディオ、ナビケーションシステム等)によって、実際にかけた金額が変わるからです。

オプションとは、車に固定されている物(エアコン、カーステレオ、ドアバイザー(サイドバイザー)、カーナビゲーションシステム、ETC車載器など)の他に、載せられている物(標準工具、フロアマット、スペアタイヤなど)も含まれます。

ただし、車の所有者が持ち込んだ装備や積載物は、対象外になるかもしれません。気になる物があれば、事前に損保会社に確認しましょう。

とは言いながら・・・

保険金額の指定を迷うなら、できるだけ高い金額にしましょう。

そのほうが安心ですし、保険金額を上げることによる保険料の上がり幅は、さほど大きくはありません(数百円程度)。

免責金額を指定するなら、お手元の資金から無理なく負担できる金額にしましょう。

車両保険の保険金額を指定するときに、同時で免責金額の指定を求められます。

指定しないことも可能です。しかし、手元の資金に少しでも余裕があるなら、前向きに検討してほしいです。

免責金額とは

免責金額を指定すると、修理代のうちその金額までは、こちらが自腹を切ることになります。

損保会社の側から見ると、免責金額以内の修理代は、保険金を払う責任を免れることになります。

たとえば、免責金額を10万円に指定していて、修理代が15万円になったら、免責金額分の10万円は自腹を切って、車両保険からもらえるのは、残る5万円です。

修理代が10万円以下に収まったら、全額自腹になります。

車両保険の免責金額の仕組み

免責金額を指定すると、それだけ車両保険の保険料は安くなります。

免責金額の指定方法

免責金額を指定するときは、2つの金額を指定します。

表記は保険会社によって異なりますが、たいていは「5万円−10万円」のように表します。他によく見かけるのは「0-10万円 」「10万円-10万円」あたりです。

たとえば・・・

5万円 − 10万円

という指定であれば、

5万円が、保険期間中の1回めのときの免責額です。

10万円が、2回め以降の免責金額です。

免責金額を指定しないこともできます。指定しなければ、修理代全額を車両保険でまかないます(ただし、限度額を超えたら、その分は自腹)。

保険料に影響が大きいのは1回めの金額です。そして、免責金額を大きくするほど、車両保険の保険料は下がります。

ただし、免責金額を指定したら、いつでも自腹を切れるように、その金額を確保しなければなりません。

免責金額を指定するなら、無理のない金額にしましょう。

車対車免ゼロ特約

この特約は、上の免責金額と一体として機能します。

たとえば、免責金額を「10万円−10万円」と指定すると、修理代のうち10万円は自腹になります。

しかし、車対車免ゼロ特約を車両保険に付加すると、保険期間中1回目の自動車同士の事故に限り(ただし、相手方を特定できること)、免責が無くなります。

免責が無くなるということは、加入者の自腹はゼロになります。

この特約を付けると、保険料が少し上がりますが、小額です。

ちなみに、損害保険料率算出機構『自動車保険の概況』(2021年度)によると、車両保険を使った事故の、原因の割合は図のようになります。

車 対 車 車 対 人 車 対 物 単独事故

車対車(=自動車同士)の事故が最も多いです。しかし、40.6%と全体の半分以下にとどまっています。

ということは、車対車免ゼロ特約を付けても、免責金額を負担する覚悟は、しておきたいです。

どれくらいの人たちが車両保険を付けていますか?

全車種では過半数が車両保険を付けています。また、乗用車の方が付けている人が多いです。

損害保険料率算出機構『自動車保険の概況』(2021年度)によると、全車種での車両保険の付保率(自動車保険・共済加入者のうち、車両保険を付けている人の割合)は58.2%です。

ただし、車種によって、かなり差があります。いくつか、具体例をご覧ください。

車種 付保率
自家用 普通乗用車 72.9%
自家用 小型乗用車 65.2%
自家用 普通貨物車 55.7%
自家用 小型貨物車 57.0%
軽乗用車 59.2%
全体 58.2%

貨物車より、乗用車のほうが、付保率はあきらかに高いです。

また、車両価格が高くなるほど、車両保険の付保率は上がっているように見えます。

車両保険を付けるか付けないかは、2つの保険料で判断しましょう。

車両保険に興味を持つきっかけは、いろいろとあると思います。新車を買ったのでキズつけないか心配だとか、免許取り立てとかペーパードライバーだったので心配だとか・・・

とは言え、実際に、車両保険を付けるか付けないかの判断には、2つ保険料が大きく影響しそうです。2つの保険料とは、

  • 車両保険のためにかかる保険料
  • 車両保険を使った後の、更新後の保険料

以下で、詳しく説明します。

車両保険の保険料は高い

代理店型とダイレクト(ネット通販)型の、それぞれ売上高上位2社の自動車保険の、全体の保険料とそのうちの車両保険の保険料が占める割合を、下のグラフに表しました。

おもな自動車保険の保険料と、そのうちの車両保険の保険料の割合

上のグラフのはあくまでも一例です。補償内容を変更したり、特約を付加したら、車両保険の割合は変わります。

とは言え、車両保険を付けるか付けないかで、自動車保険の保険料が大きく変わることは、お分かりいただけると思います。

車両保険を使うと、次の更新から、保険料が大幅に上がる

車両保険を使うと、2つのペナルティが課されて、次の更新のときに保険料が高くなります。2つのペナルティとは・・・

  • 事故の原因に応じて、等級が1つまたは3つダウンして、その分保険料が高くなる。
  • 事故の原因に応じて、1年または3年間にわたって「事故あり係数」が適用されて、保険料が割増される。
自動車保険を使うと、保険料は二重にアップ

現在の等級・保険料によって、保険料の上がり方は異なりますが、いずれにしても、一度でも等級ダウンすると、その影響は長く続きます。

図は、現在17等級の人が事故を起こしたきに、自動車保険を使った場合と、使わなかった場合の、その後の保険料の違いを表しています。

赤線が、自動車保険を使った場合の年払い保険料、紺色の線が使わなかったときの年払い保険料です。

自動車保険を使ったときの、等級ダウンと事故あり係数適用期間の影響

このように、いったん等級ダウンしてしまうと、等級の上限である20等級に達するまで、ずっと多く保険料を払い続けなければなりません。

この図の例では、自動車保険から保険金を受け取ることによって、7年間は保険料を余分に負担することになります。余分に負担する金額の合計は、約10万円です(現在の等級や、保険料の金額によって変動します)。

ご自分の自動車保険で、3等級ダウンしたら次からの保険料がいくらになるかは、損保会社に問い合わせてください。簡単に教えてくれます。

2つの保険料を見比べて、車両保険を付けるか判断

車両保険の保険料は高くなりやすいです。しかも、使ったら使ったで、保険料は値上がりします。

数万円くらいの修理代のために車両保険を使うと、損になるかもしれません。

修理代が安いときに車両保険を使わないなら、上でご説明した免責金額を設定して、車両保険の保険料を下げる方が、ムダがありません。

お持ちの車が古くて、車両保険の保険金額が10〜20万円くらいなら、車両保険を外すという判断もありえます。

少々面倒くさいですが、保険料のムダを省くためには、意識していただきたい点です。

事故原因によって、ダウンする等級に違いがあるそうですね。どんなときに、どうなるのか、気になります。

自動車保険の等級は、個々のドライバーの優良度を表します。等級が上がるほど、保険料は安くなります。

初めて自動車保険に入ると、6等級からスタートします(保険会社によっては7等級)。

次の更新までの1年間に、保険を使わなければ(保険金をもらわなければ)、更新によって1等級上がります。保険を使ったら、逆に等級は下がります。

毎年これを繰り返します。等級は1〜20に分かれています。20等級が最高位です。

等級は、他社の自動車保険に乗り換えるときに、引き継がれます。つまり、自動車保険の等級は、損保業界共通の、ドライバーの優良度ランクと言えそうです。

等級が高くなるほど、保険料は安くなります。スタートの6等級と最高位の20等級の保険料を比べると、見積もり条件が同じなら、半分以下まで安くなります。

車両保険を使うと、3等級ダウンか1等級ダウンになり、更新後の保険料は必ず上がります。

自動車保険の事故は、「3等級ダウン事故」「1等級ダウン事故」「ノーカウント事故」の3つに分かれます。

「ノーカウント事故」とは、等級ダウンにならない=保険料に影響しない事故です。

残念ながら、車両保険を使う事故は、必ず「3等級ダウン事故」か「1等級ダウン事故」のどちらかになります。

1等級ダウン事故の例

1件の事故で、1等級下がる事故です。

  • 火災または爆発
  • 盗難
  • 騒じょうまたは労働争議に伴う暴力行為または破壊行為
  • 台風、竜巻、洪水、高潮またはその他の自然災害による水没・浸水
  • 落書またはいたずら等の契約自動車に対する直接の人為的行為
  • 飛来中または落下中の他物との衝突

これらの他に、偶発的な事故も、1等級ダウンになることが多いです。

3等級ダウン事故

1件の事故で、3等級下がる事故です。

車両保険を使う事故で、1等級ダウン事故にならなければ、3等級ダウンになります。なので、広範囲に渡ります。

他人を死傷させたり、他人のものを壊したり、自分の車を壊したら、ほぼ3等級ダウン事故になります。

当て逃げされるなどは、こちらに過失がなくても、3等級ダウン事故になります。

3等級ダウン事故か1等級ダウン事故かで、「事故あり係数適用期間」の長さが決まります。

事故あり係数適用期間とは、事故で保険を使ったために、保険料が割り増しされる期間です。

3等級ダウン事故で保険を使ったら、次回更新から3年間、1等級ダウン事故なら1年間が、事故あり係数適用期間になります。

ちなみに、この期間は加算されます。

たとえば、同じ保険期間中に3等級ダウン事故と1等級ダウン事故を1回ずつやったら、合計4年間が、事故あり係数適用期間になります。

事故あり係数適用期間は、最長で6年です。加算されても、6年を超えることはありません。

車両保険の保険料を、できるだけ安くする方法を、教えてください。

誰にでもできる車両保険の節約方法は4つあります。

車両保険の保険料を節約する方法は4つあります。

  • 補償対象となる事故の範囲を狭くする。
  • 車両保険の保険金額をできるだけ低く設定する。
  • 免責金額を設定し、金額をできるだけ高くする。
  • もっと保険料の安い自動車保険に切りかえる。

4つのうち、上の3つに関しては、すでにこのページでご説明しました。

それぞれ保険料を下げられますが、リスクもあります。

事故の範囲を狭くしたり、保険金額を低くしたり、免責金額を設定すると、いざ事故が起こったときに、自腹を切ることになる可能性がそれだけ高くなります。

それに比べると、4つめ、もっと安い他の自動車保険に切りかえることには、リスクがありません。

最もおすすめな方法は、保険料の安い自動車保険への乗り換えです。

もし現在、代理店型自動車保険にご加入なら、ダイレクト(ネット通販)型に切りかえるのが、効果的です。

グラフは、主な自動車保険の、車両保険の保険料と、それ以外の保険料の関係を表しています。
35歳、夫婦限定、トヨタのアクアという条件で見積もった、一例です。

上から7社がダイレクト(ネット通販)型自動車保険、残りの4社が代理店型自動車保険です。

ダイレクト(ネット通販)型に車両保険を付けても、車両保険を付けないときの代理店型の保険料と、同じくらいか、少々高くなる程度に収まります。

それでいて、ダイレクト(ネット通販)型と代理店型の補償内容に、大きな違いはありません。

特約の品ぞろえは代理店型の方が多いですが、車両保険本体の内容は、ほとんど同じです。

自動車保険の無料一括見積りサービスはいくつかありますが、以下の理由で、こちらのサービスをおすすめします。

  • 1回入力すれば、複数の気になる自動車保険の見積りが、一気に作成されます。
  • 参加している保険会社数が多く、おすすめしたい自動車保険がすべて含まれています。
  • 『保険見直し本舗』(全国300店舗以上)を展開する株式会社ウェブクルーによるサービスなので、安心感がある。
  • サイトの利用はもちろん無料。
  • サイトは使いやすく、各損害保険会社とのつながりはスムーズ。

自動車保険サイトの1社分の情報を入力すると、おもな自動車保険の保険料が図のように一覧表示されます。

その後、個々の自動車保険のホームページに移動して、さらに条件を変えて、試算をやり直すこともできます。

このサイトの利用者を対象としたアンケート調査によると、月々の保険料が平均して約25,000円安くなったそうです。

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