業務用・営業用自動車を、自動車保険に入れるときに、留意しなければならないことは、何でしょうか?

業務用・営業用自動車の自動車保険は、個人契約か、会社契約(法人契約)かで、取り扱いが異なります。

業務用・営業用自動車であろうと、保険としての補償内容に根本的な違いはありません。ただし、契約形態や手続に違いがあります。

個人契約の場合

個人として加入するときは、業務用であろうと、日常・レジャー用であろうと、違いはありません。

自動車保険の加入手続のときに、車の使用目的を指定します。そこで、車の用途を「業務用」などと指定します。
その他に、特別なことをする必要はありません。

なお、通勤・通学での使用は、業務用にはなりません。
悩ましいのは、車を仕事でも使い、レジャーや買い物などにも使う場合です。月の半分以上を仕事で使うときは業務用とする損保会社が多いようです。迷ったら、損保会社に問い合わせましょう。

会社契約(法人契約)の場合

代理店型自動車保険は、原則として、どの損保会社でも、法人契約可能です。

ダイレクト(ネット通販)型自動車保険で、法人契約ができるのは、わたしの知る範囲では以下の3社です。
インターネットではなく、電話での申込となります。

ソニー損保 記名被保険者が法人の場合は、ロードサービスが使えません。
セコム損保 セコム損保には代理店型とダイレクト(ネット通販)型の両方があります。ダイレクト(ネット通販)型のほうが保険料は安くなりますが、1台しか契約できません。複数台のときは代理店型になります。
チューリッヒ保険 契約台数は5台以下までです。ロードサービスは使えますが、補償内容にいくつか制限(いくつかの特約を付けられない)がつきます。

ダイレクト(ネット通販)型自動車保険は、通販であるために、複雑な事務手続きやきめ細やかな個別対応には不向きです。そのために、取り扱っている損保会社は限られてしまいます。

業務用の車が複数台あります。手続きや管理が簡単にでき、割安な保険料で、自動車保険に入る方法はありますか?

車が複数台あるときは、その台数によって、フリート契約か、ミニフリート契約をおすすめします。

1台1台別々に自動車保険に入れるより、手続きや管理が簡単になり、保険料が割引になる加入方法があります。

10台以上のときはフリート契約

10台以上のときは、自動車保険のフリート契約がおすすめです。
一般の自動車保険が車1台1台での契約になるのに対して、フリート契約では複数台をまとめて契約します。それによって、次のようなメリットがあります。

  • 自動車保険の契約の手続きや管理が簡単になる。
  • 車1台あたりの保険料が割安になる。

フリート契約をするなら、代理店型の自動車保険を利用することになります。

一般の自動車保険なら代理店型の保険料は割高です。
しかし、フリート契約は保険料の割引率がとても大きいので(60%以上)、1台あたりの保険料で比較すると、ダイレクト(ネット通販)型自動車保険に1台1台契約するより、ずっと割安です。

2〜9台以上のときはミニフリート契約

上のフリート契約に似た契約方式として、ミニフリート契約(損害保険会社によってはセミフリートなど、他の呼び方をする)があります。
自動車保険の契約の手続きや管理が簡単になるのは、上のフリート契約と同様です。

保険料の割引もあります。もっとも、割引率は3〜5%が相場と、低いです。
ミニフリート契約を取り扱っているのは、ほとんどが代理店型自動車保険です。3〜5%くらいの保険料の割引だと、ダイレクト(ネット通販)型自動車保険に個別に加入するより割高になる可能性が高いです。

しかし、1台ごとに個別に自動車保険に入ると、自動車保険の手続きや管理の手間がそれだけ発生します。業務用・営業用として車を使うなら、事務負担も考慮しなければなりません。。
事業の体制を踏まえて判断してください。

業務用の自動車保険の経理処理はどうすれば良いですか?

業務専用の車の保険料は、全額経費として処理します。

自動車保険の契約期間が1年以内の自動車保険料は、保険料全額を経費処理します。勘定科目は、以下のどちらかを使います。

  • 損害保険料
  • 車両費

これが、自動車保険の経理処理の基本形です。

1年を超える長期の自動車保険

1年を超える長期の自動車保険の保険料は、期間按分します。

  1. 保険の初年度は、初年度分の保険料を〈損害保険料〉または〈車両費〉とし、それ以外の金額を〈長期前払費用〉などに計上します。
  2. 翌年度以降は、〈長期前払費用〉などに計上した金額から、その年度分の保険料を〈損害保険料〉または〈車両費〉に振り替えます。

自賠責保険の保険料

自賠責保険(強制保険)は、車検のたびに支払うので、長期の自動車保険と似ています。

しかし、自賠責保険の保険料は、租税と同様に扱うのが一般的です。この方が、処理が簡単です。

つまり、保険料支払った年度に、全額を〈損害保険料〉または〈車両費〉として経費処理することが、認められています。

車を自家用としても業務用としても使っているときは家事按分します。

自家用・業務用とで兼用している車の保険料も、上のやり方に準じて、経理処理します。

ただし、自動車保険料の全額を、経費にすることはできません。家事按分をしなければなりません。

というか、保険料に限らず、その車にかかる費用のすべてを(ガソリン代など)、家事按分する必要があります。

車のかかる費用の家事按分

具体的には、自家用と業務用の比率(=按分比率)を決めて、費用のうち業務用の按分比率分を、〈損害保険料〉または〈車両費〉として経費処理します。

たとえば、生活用の按分比率30%、業務使用の按分比率が70%なら、1年分の保険料の70%を〈損害保険料〉または〈車両費〉に計上します。

このとき、悩ましいのは、按分比率の決め方です。

車の按分比率の決め方は2通り

按分比率の計算方法は、税法などで決められているわけではありません。

事業主の責任で、車の使用実態に即して、按分比率を決めます。決め方は、次の2つが一般的です。

  • 走行距離
  • 使用日数

ほとんどは業務使用だけど、たまに生活用に使う(あるいは、その逆)、というような使い方のときは、走行距離で按分比率を決めましょう。

ただし、たまに使った方の走行距離を、記録しておく必要があります。

日常的に両方の用途に使うときは、走行距離をいちいち記録するのは煩雑です。走行距離より、使用日数で按分比率を決めるほうが、やりやすいです。

たとえば1週間の平均使用日数をもとに、按分比率を決めます。

税務署に質問されたときに、説明できるように、按分比率を決めましょう。

按分比率の計算方法には決まりがありません。

よって、事業主の責任で計算しなければなりません。やりすぎれば脱税行為になります。

税務署に質問されたときに、明確に説明できるやり方で、家事按分しましょう。

読まれている記事
更新情報